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​著作の内容

「音声・映像の統合による授業」《LL通信(ソニー)NO.165~168号 1992年》

《初山別村立初山別中学校》※文部省研究指定校

研究主題

  LLと視聴覚機器の活用による英語指導法

 ー音声と映像の統合を利用した授業実践ー

2.研究主題のおさえ

  本校のLLが更新されてから丸3年が経過した。全学年の英語の授業は、毎時間LL教室で行っている。従来の

 LLは、音声面を中心に分類されていたが、視聴覚機器を兼備した統合的なLLが、主流をなしてきている。

   本校のLLも、A-A-C型と言われるものに、VTR、マルチスクリーン、ビデオプロジェクター、オーバー

 ヘッドカメラなどが設置されたものである。そこで音声面だけを中心に考えられていたLLの授業内容を、視聴

 覚機器(教材)を活用したものにしていこうと考えた。

3.研究の仮説

 1 LLと視聴覚機器の効果的な活用を図ることにより、生徒に学習に対する興味や関心をもたせ、コミュニ

  ケーション能力を高めることができる。

 2 視聴覚機器を多く利用することにより、内容把握が容易にできる。

 3 LLと視聴覚機器の活用により、内容把握が容易にできる。

4.研究事項及び研究事項

 1)研究事項

 (1)LLと視聴覚機器の効果的な活用方法と、学習に対する興味や関心の持たせ方の工夫

 (2)Listening Comprehension(聴解力) と audio-visual aids(視聴覚教材) との統合による評価の工夫

 (3)学習の個別化、効率化と意欲化を図るための指導法の工夫

 2)研究方法

 (1)LLと関連機器の利点を明確にし、効果的な活用方法を工夫する。

 (2)市販ソフトや番組録画テープを有効に利用した授業実践を図る。

 (3)個人差を配慮したLL教材の作成と活用を工夫する。

 (4)生徒の変容した姿をとらえるために、学力検査や意識調査、自己評価を実施し生徒の実態を把握する。

 

5.研究組織(省略)

 

6.研究の経過

 1.第1年次〈平成2年度〉

   4月 文部省研究指定校連絡協議会に出席 近隣市町村の学校へ協力要請

   5月 先進校視察《旭川第二中学校(昭和61・62年度文部省研究指定校》、

      中央長沼中学校《昭和63・平成元年度文部省研究指定校》

      指定研究計画の概要を文部省に提出

   6月 校内指定校研究体制確立 村内英語サークル指導案検討会 校内自主公開授業研究

      道立教育研究所語学研究室、教育資料室で指導・助言を受ける

   7月 初山別村英語サークル研修(教育機器を活用した指導の工夫)

   9月 村内英語サークル指導案検討会 校内自主公開授業研究

   10月 全道高等学校LL研究会(留萌高校)に特別参加

   11月 村内英語サークル指導案検討会

   12月 校内授業研究《指導主事訪問》(LLと視聴覚機器の効果的な利用法》

   1月 生徒の英語学習についての実態調査

   2月 実態調査の結果分析 校内自主公開授業研究 初年度研究のまとめ

   3月 校内授業研究(LLにおける個別指導について) 次年度の研究計画の策定

      中間報告書を文部省に提出

 2.第2年次〈平成3年度〉

   4月 今年度の推進計画作成 文部省指定校研究連絡協議会に出席

   5月 管内英語研究会に公開研究会に関して協力要請 札幌市立宮の森中学校のLL視察

      道立教育研究所語学研究室長に公開研究会について説明

   6月 公開研究会に向けての校内プロジェクトチーム発 公開研究会の要項決定

      校内授業研究(視聴覚機器の活用法について)実施

      〔特別参加:村内英語サークル、管内英語教育研究会副会長等参加〕 第1次案内発送

   7月 初山別村英語サークル研修(公開研に向けて)

   9月 公開研指導案原案作成

   10月 村内英語サークル指導案検討会 第2次案内発送 村内英語サークル授業研

   11月 初山別村英語サークル研修 公開研究会

7.研究成果の概要

 1.教育機器利用による英語教育

  1)考え方

    英語教育が人間の「ことば」を対象とする以上、完璧な教授法、完全な手法というものは存在しない

   のではないだろうか。教室における英語の授業では、教授法とか手法を越えて、補わなければならない

   部分が多くある。それでは何がそれを補うのであろうか。もちろん教師自身の力がそれを補うのである。

   それは教師自身の英語の「ことば」の力であり、才能によるところもあろう。一つの手法がある教師に

   かかると、すばらしい効果をあげるように見える場合があるが、別の教師によれば、かえって逆効果に

   なる場合もありうる。

    誰でもどんな教師が指導しても、内容的にも方法的にも、とにかくあるところまで確実に大きく改善

   され、より効果的な英語の授業を展開させることができるようになるのは、視聴覚教材(機器)の利用

   によってではないだろうか。

  2)聴覚教材(機器)の実態

    聴覚を通じて聞かせる教材は、放送、電話、レコード、録音テープなどの形がある。機器としては、

   ラジオ、レコードプレーヤー、テープレコーダー(カセット、マイクロカセット)などがある。

    言語を人間の「ことば」として本質的にとらえるならば、音声面を重視するのは当然である。言語の

   修得をしようとする時、最も効果的な訓練が可能となる音声を録音し、再生することのできるテープレ

   コーダーは、英語教育では大きな役割を果たした。

  3)視聴覚教材(機器)の実態

    視覚を通してみせる教材は、実物(物品、身ぶり、動作など)、模型、掛図、フラッシュカード、

   TP、スライドなどがある。機器としては、OHP、実物投影機(OHC)、テレビカメラ、モニター

   テレビなどがある。

    読んだり書いたりする指導上、視覚教材は必要ではあるが、音声によって指導する場合にも重要であ

   る。

  4)視・聴覚教材の実態

    視覚・聴覚の両感覚を通して聞かせ、見せる教材には、テレビ放送番組、ビデオテープ、ビデオ・

   ディスク、人間による言語行動(教師によるもの、生徒によるもの、劇)などがある。機器としては

   テレビ、ビデオなどがある。

    特にビデオによって、英語教育にも映像教材が自由に使えるようになった。このことは、テープレ

   コーダーが導入された時と同じように画期的なことであった。

    考えてみると、人間の言語行動は音声だけではないのである。音声で表現すると同時に、ほとんど

   無意識のうちに私たちは身体の動きを伴わせている。いわゆる身ぶり(gesture)といわれるような動

   きから、ほとんど分析できないような微妙な変化・動きまで、直接ことばと結びつくようなかたちで

   伴わせている。そして、私たちはあらゆる感覚を通してこれらを受けとめ、人と交流しているのであ

   る。重要なことは、これらの身体的な変化・動きの中に属する言語社会に特有な部分が、相当広がっ

   ていることである。

    これらの英語教育は、このような音声以外の要素にも目を向けるべきであろう。今までは、これら

   を教室で簡単に扱うことができなかった。しかし、ビデオの導入によって、それが可能になったので

   ある。人間の言語活動で同じように重要なその場面・状況・文化的背景の提示、訓練のための手がか

   りの提示などに利用することを含めて、ビデオはたいへん有効である。

2.本校における教育機器の利用法(LL授業時)

  1)ビデオプロジェクターとマルチスクリーン

    「英語であそぼ」、「ステップ英語」(詳細は別項)などの英語番組を録画・再生して利用する。

   マルチスクリーンは、画面が大きく迫力があるので、生徒が興味関心を持ち、内容に集中できる。

   ただし、マルチスクリーンを使用する場合、教室を暗くしなければならないこと、黒板が使えなく

   ることなどが、欠点としあげられる。

  2)OHC(オーバーヘッドカメラ)とモニターTV

    OHCは、従来のOHCと比較してたいへん使いやすいことがわかる。写真、スライド、教科書、ピ

   クチャーカードなど、実物そのものをカメラを通して、マルチスクリーンやモニターTVに映し出す

   ことができる。(他教科でも可能)

  3)LL機器

   (1)テープ編集

    教科書準拠テープは、そのままでは利用しにくい。例えば、1回だけでなく2回、3回と聞かせた

   り、読ませたりする場合は、「巻き戻し」を繰り返さなければならない。巻き戻しは、スムーズな流

   れを中断してしまう。そこでテープ編集機能がついているこのLL機器で、教科書準拠テープを編集

   し、リピートを2回させたりする。

   (2)MONITOR & INTERCOM

           会話練習は、もちろんペア活動が中心となるが、4人のグループ活動も可能となる。さらにペアを

   交換することにより、生徒同士が常に新鮮な気持ちで活発に練習することができる。

 

3.音声と映像の統合

  1)ビデオ教材の内容とその指導

    (1)「中学英語の基礎」(全12巻)

    これは、中学1年生段階の文法事項の習得を、目ざしたものである。会話中心に文法の規則を生徒

   に発見させるような内容となっている。練習問題(Practice)もあり、単なる説明に終わっていない。一

   切日本語が使われていないのが、この教材の特徴である。

   ☆成果

    教師側の詳しい文法的な説明は極力さけ、疑問文や否定文の作り方は、音声(抑揚など)や映像で

   (上記ビデオ教材の場合は、文字が中心となっているが)を使うことによって、生徒が言語の構造規

   則を発見できるようになった。

  2)テレビ番組の内容とその指導

    昨年度から、NHK教育テレビの番組が大幅に改訂され、英語関連番組が増加した。また、本校に

   は衛星放送の受信施設もあるので、衛星放送の番組で中学生でも理解できそうなものを利用している。

    (1)「英語であそぼ」(教育テレビ、月~金、17:40~17:55)

    幼児を対象とした英語番組である。スキットあり、アニメーションあり、歌・踊りありと内容が多

    彩である。日本語も多く使用されているので、中学生にとって内容はそれほど難しいものではない。

   生徒は興味・関心を持って見ていることがほとんどである。

 

    (2)「ステップ英語」(教育テレビ、月~木、12:00~12:05)

    【平成2年度】

    5分間番組であるが、内容の濃いものである。native speaker が登場し、日本語は一切話さない。

   疑問詞を使った基本文型を繰り返し、会話形式で聞かせる内容である。途中で文字の表示も入る。

    【平成3年度】

    今年度は、日常よく使う表現を中心に構成されている。まず日本語のスキットから入り、それを

   英訳するとどうなるかという考え方である。日本人の中学生が必ず出演することもあり、生徒には

   身近なものとしてとらえることができる。

    また、英語の慣用表現も覚えることになり、たいへん有効なものである。

    (3)「Hello to English」(衛星第2、月~土、18:25~18:30)

    【平成2年度】

    これも5分間番組である。一切日本語は使用されない。外国の子どもたちが中心となって出演し

   ている。この番組も、スキット、アニメーション、歌があり、生徒の興味・関心を持って接するこ

   とのできる教材であり、授業では多く利用している。

    【平成3年度】

    今年度の放送はなし。

    (4)その他

    英語のテレビ番組で老舗と言われているものに「セサミストリート」があるが、話される英語の

   スピードが速いし、(実際の英語は、このくらいの速さで言われているのだが)、難しい単語も多

   く出てくるので、生徒にとってはなかなか内容が理解できないことが多い。しかし、話されている

   場面を見ることによって、だいぶ内容の理解はできた。

    以前、アメリカのテレビドラマ「アーノルド坊やは人気者」(STV) を二か国語で録画し、英語と

   日本語をそれぞれ交互に聞かせたことがあった。(本校のLLは、二か国語放送を英語と日本語とを

   別個に聞かせることができるようになっている。)この番組は、7、8年前に放送されていたもの

   なので、何度も再放送されていて、生徒はほとんど知っている番組であったが、それを原語で聞く

   のは初めてである。その新鮮さが興味をそそり、また翻訳の難しさを学んだ。

    また「新世界紀行」、「知ってるつもり」などのテレビ番組を録画しておき授業で使用すること

   も可能である。(以前「知ってるつもり」でヘレン・ケラーの特集を放映していたので、録画し、

   3年生の "Helen Keller" の授業の中で見せたこともある。)

 

    ☆成果

    「話しことば」には、それを会話している人の感情や意志が、表れるものである。それゆえ「話

   ことば」は、それらのさまざまな情報を伝える機能である。その機能は感情、表情や意志によって、

   理解を深める効果がある。テレビ番組で話されてることばは、実際の生活場面に近いものがほとんど

   なので、生徒にとってはすんなりと入りこめるものである。従って、それぞれの場面を見せることに

   よりさらに理解をはやめ、言語活動の取り組みを容易にさせることができる。

  3)自作ビデオの指導について 

    本校の視聴覚機器の中の、OHCとVTRを結合させることにより、容易に自作ビデオができる。例え

   ば、教科書準拠のピクチャー・チャートの絵をコマドリして音声を同調させる。こうしてできたVTR

   教材は、「事柄の概要をろらえさせる」ことを中心に活用できる。

    また文法的な説明や英作文も、ビデオにすると生徒の興味がわいてくる場合がある。将来は、生徒

   にビデオ作りをさせ、カメラマンや、出演者の役割などを与えることによって、英語に興味を持たせ

   たいと考えている。そして何よりも授業で自作ビデオを見た生徒が、「面白い」、「わかった」など

   と言わせることができれば最高である。

  4)映像教材の種類

   (1)導入型・・・新教材の導入として、題材のあらすじ、話の流れなどを理解させようとするもの。

   (2)復習型・・・その課の学習が終わった段階で、内容全体を振り返り、理解の深化・発展を図る

            もの。

   (3)言語材料型・・・言語材料の理解、理解の確認、ドリルを目標とするもの。

    いずれの型を使用するにしても、視聴のねらいを明確にしておく必要がある。

4.音声と映像の統合による理解度

  平成2年9月4日と平成3年9月17日、本校の3年生(平成2年は15名、平成3年は9名)に、英語の

 落語を「音声のみ」で内容把握をさせた場合と、「音声+映像」(VTR)を見せて内容把握をさせた場

 合との比較して、その理解度を調査してみた。

 1.英語落語「犬の目」のあらすじ

  ある眼科医の所に一人の患者が、視力がだいぶ落ちたので治療をしてもらいに来た。医者がその目を

 「アイ・バキューマー」という機械で取り出してみると、その目がひじょうに汚れていた。そこでそれを

 洗浄し、助手に戸外で日光消毒をするように告げた。

  しばらくすると、助手があわてて医者の所へ来て、外に置いた眼を犬に食べられてしまったことを告げ

 た。困った医者は、その犬を捕まえて、その目を「アイ・バキューマー」を使って取り出し、患者に移植

 した。患者の目は回復した。

  次の日、またその患者が来た。医者がどうしたのかと尋ねると、患者はこう答えた。「夜になっても目

 が目が見えすぎる。それだけならよいのだが、トイレに行って用をたす時に、片方の足をあげてしまう。」

 2.内容把握の観点

  (1)場所 《正解:「眼下の病院」》

  (2)登場人物 《正解:「3人(患者、眼科医、助手」》

  (3)落語のオチ 《正解:「犬の目を入れられたので、トイレで用をたす時に、犬のように片足を上

     げてしまう。」》

​ 3.結果(単位:人)

  (1)平成2年9月4日【15人中の正解者数】の場合

       

        場 所  登場人物  オ チ

  音声のみ   4     7    0

  音声+映像  7     8    6

  (2)平成3年9月17日【9人中の正解者数】の場合

        場 所  登場人物  オ チ

 

  音声のみ   1     3    0

  音声+映像  5     6    5

  〈考察〉

  〇 「音声のみ」で内容を理解するには、中学生にとって比較的難しい内容である。「音声のみ」で内

   容がわからなかった生徒も、「音声+映像」では場所、登場人物、オチについて、それぞれわかった

    生徒が増えた。

 5.LLにおける個別指導

   生徒に学習意欲を喚起し、英語学習に主体的に参加させるためには、生徒の個々の能力、適性、興味

  などに応じた学習指導を細かく展開することが大切である。けれども、中学校における英語指導におい

  て、このように個に応じた学習の場を実際の授業の中に設定することは、たいへん難しいのが実態であ

  る。

   この意味で、LLを中心とした教育機器を、生徒一人一人を生かす学習指導に活用する実践が、もっ

  と活発に行われる必要がある。LLは本来、生徒の自主的・主体的学習を促進する機能を有しているか

  らである。

  1.モニターの活用

   例えば、生徒がLLでここに音読の練習している時に、教師がそのようすを一人一人把握することが

  できるので、発音やイントネーションなどのチェックが瞬時にでき、他の生徒の練習には関係なく、そ

  の生徒との個別指導が可能となる。

  2.コールボタンの活用

   生徒が個々の練習中に質問したいことがあった場合、コールボタンを押すことにより、すぐ教師と一

  対一で話すことができる。この場合も他の生徒の練習に支障をきたさない。

   本校のLLにはアナライザーがないため、コールボタンをアナライザーの代わりに使用する場合もあ

  る。

 

  まとめと今後の課題

 1.まとめ

  〇従来のLLで強調されていた音声面だけでなく、映像を取り入れることによって、英語の理解を深め

  ることができるようになった。

  〇VTR教材の使用やテレビ放送番組の視聴によって、生徒の興味や関心を助長させることができるよ

   うになった。

  〇非言語メッセージ(身ぶり、表情など)を取り扱うことによって、内容把握を容易にさせることがで

  きるようになった。

 

 2.今後の課題

  〇LLを使って英語を聞いたり話したりする練習を日常的にしていても、テストで読んだり書いたりす

  る形式の出題しかしていかなければ、正しい評価とは言えないし生徒もやる気をなくしてしまう。中間

  や期末テストの時だけでなく、毎時間に少しずつでもよいから、クイズ形式で Listening テストをする

  必要がある。

  〇LLは機器を用いた学習なので、教師と生徒との人間的ふれあいと、LLの授業で習得された英語の

  労力実際の場での使用を通して、確かな英語力を高めていくことが大切である。

  〇LLの機能を、「生徒の練習状態がモニターできる・指導できる・さらに生徒の活動に教師が参加で

  きる」ことと考えて、「生徒と教師がともに練習できる」場ととらえていくべきではないか。

  〇今年の8月から配置されたAETとの Team-Teaching(協同授業)の中で、LLをどう活用していく

  のか考える必要がある。

 ※「英語科学習指導案」は省略する。

 

                     初山別村立初山別中学校(文部省研究指定校)教諭

                                  河上 昌志

                               (かわかみ まさし)

「初期の学習指導要領を読んでみては」《英語教育(開隆堂出版)2001年》

                                 札幌市立白石中学校  河上 昌志

​  1947年(昭和22)年、最初の「学習指導要領英語科編」ができた。わずか28ページではあったが、「一学級の

 生徒数が30名以上になることは望ましくない」や「英語の学習においては、一時に多く学ぶよりも、少しずつ

 規則正しく学ぶ方が効果的である。それで毎日一時間一週六時間が英語学習の理想的な時数であり、一週4時

 間以下では効果は極めて減る」という部分は今日の英語教育課程に対して示唆を与えるものである。

  さらに1951(昭和26)年の「学習指導要領英語科編」は、膨大な量であったが、注目すべき内容がいくつか

 あった。「生徒をして平和を愛する個人及び公民に発達させるという目標である。言い換えれば、平和への愛

 なくしては、列挙したその他のいろいろな目標を達成することは不可能であろう。ゆえに平和のための教育は、

 英語教育課程を含めた全教育計画への条件であり、重要な部分である。と述べ、平和教育の推進を訴えていた。

 また「英語教師は、・・・特に強調しなければならないことは・・・すべての生徒はたとえもっとも遠隔の山

 村に住んでいても、やはり国民の一人であり、世界の市民である」と述べている。

  さらに、この指導要領は付録として、「英語教科書の採択基準試案」が掲載されていた。その「まえがき」

 には「教科書の選択にあたっては、教師自ら審査員であることを自覚しなければならない。・・・検定調査員

 には、いずれの教科書が優秀であるかを教師に示す方法がないから、英語教師はすべての教科書を評価し、最

 善のものを選択することができなければならない」と述べ、英語教師の関与がいかに重要かを説いている。

  「なぜ英語を勉強するのか」さらに「教科書採択問題」などの今日的な英語教育の課題に対して、50年も前

 に答えが出ていたように思う。皆さんも一度、初期の「学習指導要領」を読んでみてはいかがでしょうか。

                              《「英語教育」 2001.VOL53-3 P8 開隆堂》

 

「答えはすでに出ていた」《英語教育Fifty(大修館書店)2002年》

                                 札幌市立平岡中学校  河上 昌志

  1947年に出された学習指導要領英語編(試案)には、「英語を教える習慣を作るためには、(中略)一学級の

 生徒数が30名以上になることは望ましくない」とか、「英語の学習においては、一時に多く学ぶよりも、少し

 ずつ規則的に学ぶ方が効果がある。それで毎日一時間一週六時間が英語学習の理想的な時数であり、一週4時

 間以下では効果は極めて減る」「特に中学校においては、聴き方・話し方・読み方・書き方は別々の時間でな

 く同じ授業の中で総合的に学習されることが望ましい」と書かれていた。

  また、1952年に出された学習指導要領外国語科英語編(試案)では、「生徒をして平和を愛する個人及び公民

 に発達させるという目標である。言い換えれば、平和への愛なくしては、列挙したその他のいろいろな目標を

 達成することは不可能であろう。ゆえに平和のための教育は、英語教育課程を含めた全教育計画への条件であ

 り、重要な部分である」と、英語教育の目標を明確にしていた。

  さらに「教師がこの学習指導要領を、英語教育課程を構成するための、固苦しい、動きのとれない手引きと

 して使うことは期待していない」と述べていた。その上、教育の地方分権に関しても、「地域社会がそれぞれ

 異なる以上、それぞれの地域社会がたどる発達も異なるべきである。(中略)全体主義的な国家においては統

 制された教育組織が普通であろうが、民主的な国家としてはその性質上地域的および個人的差異に当然重きを

   置く。(中略)地域社会変化し発達していく以上、固定した不変の教育課程などというものはあり得ないので

   ある」と書いてあった。

 「なぜ英語を学ぶのか・教えるのか」という命題、また、学習指導要領に関するさまざまな問題に関しても、

 50年前に答えはすでに出ていたのではないだろうか。

                             《「英語教育 Fifty 」2002.5.5 P84 大修館書店》

 

「デジタル掛図の効果的な利用法」《東書Eネット(東京書籍)2005年》

「NEW HORIZON English Course DVD の効果的な利用法(PDF)」

                     《東書Eネット(東京書籍)2007年》

 

 

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